【1人目不妊 日記1-21】
妊娠中は仕事はせず、穏やかに毎日を過ごすようにしていました。
健診もかかさず病院に通っていましたし、毎回特に問題はなく順調に赤ちゃんも育ってくれていました。
「妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)」なんて一度も言われた事ありませんでした。
本当に健康でした。
先生にも「何にも問題ありません!」と太鼓判を押されていたのです。
ところが・・・
ヘルプ症候群は、突然やってきました。
Contents
ヘルプ症候群の初期症状:吐き気・胃痛・背中の痛み・みぞおちの傷み
ヘルプ症候群の主な症状は以下の3つです。
・溶血(hemolysis)
・肝酵素の上昇(elevated liver enzyme)
・血小板減少(low platelets)
この3つの頭文字をとって「hellp症候群」と名付けられました。
ですが、自覚症状は意外なものでした。
初期症状
その日の夕方に初期症状が現れました。
まずは吐き気と胃の痛みが現れました。
ふつうは急性の胃腸炎か何かだと思うでしょう。
しかし普通の胃痛とは違い背中も痛みます。
後々調べると、この背中の痛みもヘルプ症候群の特徴的な症状らしいです。
その時はまったくわかりませんでした。
次は激しい吐き気とおう吐
夜20時~夜中3時くらいの間。
猛烈な吐き気・おう吐が続きます。
さらに頭痛もだんだん強くなります。
発症から数時間、症状はどんどん強くなっていきます。
吐くほどの食べ物が胃の中にないのに、激しい吐き気は何時間も続きました。
洗面器を持ったまま、眠る事も出来ず吐き気と胃の痛み(背中の痛み?)に耐え続けます。
「こんな時になんで食あたりになったんだろう」
そう思いながら、夫婦で長い夜を耐えて過ごしました。
初期症状から10時間後。血圧は200以上に激しく急上昇!
夜間の救急診療を受けたのは翌日未明です。
夕方に発症してから約10時間経過していました。
この間、私たちの知らない間に血圧はどんどん上昇していました。
高血圧が原因なのか激しい頭痛が続きます。
でも私たちは血圧を測る習慣がありませんでした。
もちろん血圧計も準備していませんでした。
その後の病院での診察で、血圧が200を超えている事を知りました。
受け入れてくれる病院が見つからない!妊婦なのに・・・いや妊婦だから!
「医者は困った人を助けてくれる」
そう思っていた私たちは、この夜に現実の厳しさを思い知ります。
妊婦である事。
夜間である事。
これらが理由で電話先で診療を拒否され続けました。
「妊婦なんですが」と言ったとたんに明らかに態度が変わるのです。
追い詰められた私たち。
しかし非情にもヘルプ症候群の症状はどんどん襲ってきます。
たらいまわし状態に近かったあの日。
何軒もの病院に電話をし続けた夫。
初めて経験した心境。
焦り。
悲壮感。
そして無力感。
あの夜の事は忘れられません。
最悪だったのは出産予定の産婦人科にも診察を断られた事です。
今考えても悔しいような複雑な気持ち(抑えた表現)になります。
あの受付の看護師がもう少し・・・今思い出しても・・・。
5件目?いや6件目くらいだったでしょうか?
「わかりました、来てください」
ある病院が受け入れてくれました。
この時の嬉しさと安堵感は、本当に口では言い表せない程でした。
外科医はヘルプ症候群に気付いてくれない!
「医者は何でも知っている」
そんな思い込みが間違いだと思い知らされた出来事でもありました。
胃の痛み、背中の痛み、激しいおう吐、激しい頭痛、そして血圧の急激な上昇。
それだけの自覚症状と診察を終えても、医者は「ヘルプ症候群」だと気付いてくれませんでした。
「とりあえず血圧の降下剤を出します」
血圧が下がれば、頭痛も収まるでしょう。
結局、症状に対する対処療法として血圧を下げる薬をもらっただけでした。
それでも私たちにとっては「捨てる神あれば拾う神あり」といった心境でした。
妊婦を理由に数件の病院に診察を断られた後でしたから。
かかりつけの産婦人科医もヘルプ症候群に気付かない!
翌日、改めて電話をして出産予定の産婦人科を受診しました。
未明の救急診療で降下薬はもらったものの、体調が良くならないからです。
かかりつけ(出産予定)のレディースクリニックでこれまでの経過や自覚症状を説明しました。
でも、その時に至っても、まだ先生はヘルプ症候群に気付きません。
また血圧の降下剤をもらい自宅に戻りました。
そして、また辛い夜を迎えました。
結局は症状が発症した夜の翌々日の朝になって、やっとヘルプ症候群だという診断がおりる事になります。
気付かなかった顔のむくみ!
産婦人科の先生から早めの出産を提案され出産準備。
その後、緊急の帝王切開へと変更。
この時、産婦人科の病室で撮った写真を改めてみてみると、ものすごく顔がむくんでいます。
そう。
ヘルプ症候群になると、顔がむくみます。
これも後で知りました。
ヘルプ症候群の特徴的な症状です。
この時はまだ産婦人科の先生はヘルプ症候群だとは思っていなかったようです。
その後の血液検査の結果が届き、それを見て突然先生が青ざめたようです。
夫が先生に呼び出され緊急事態であることを説明されます。
救急車で急性期病院へ移送。
まさに命がけの出産の始まりでした。
ヘルプ症候群の確定診断のタイミング
確定診断というのでしょうか?
要は「あなたはヘルプ症候群を発症しています」と医師が診断を下すことです。
医者がヘルプ症候群に気づかなければ、適切な処置が行われないまま、症状が悪化し致命的になります。
私の場合は、産婦人科の先生が「ヘルプ症候群である事」に気づいてくれたのは出産の3~4時間前くらいです。
初期症状が現れてから40時間くらい経過しています。
血液検査の結果を見て確定診断
診断の決め手となったのは「血液検査の結果」でした。
当初は医者も「なぜ血圧が下がらないのだろう?」としきりに悩んでいました。
血液を採取して、検査機関に出して結果が返ってきた時に気付いたようです。
小さなレディースクリニックでは血液検査を自分の医院で行う事が出来ないからです。
「血小板が急激に減っています。」
確かそのあとにもう一度血液検査をしたと思います。
2回目の血液検査では、1回目よりさらに「血小板数の減少」が進んでいたようでした。
そこで初めて医者が主人に「生命にかかわる事態です。一刻の猶予もありません。」と告げたのでした。
医者も初めての経験
医者自身もヘルプ症候群の患者を診るのは初めての経験だったらしく、その慌てぶりは凄かったと後ほど夫に聞きました。
もしも過去に経験があったら、先生はもっと早く診断が下せたのかもしれません。
そしてあの看護師も、苦しむ患者を電話先で門前払いする事はなかったのかもしれません。
ヘルプ症候群については、医者だけを頼るのではなく、自分でも症状や特徴を覚えておいた方が良いと思います。
ヘルプ症候群の恐ろしい特徴
ヘルプ症候群は恐ろしいものです。
あっという間に血圧は200を超えます。
血圧の薬を飲んでも下がりません。
さらに恐ろしい事に血小板の数がみるみる減少していきます。
理由は肝臓が正常に機能しなくなる事です。
血小板の数が減ると出血が止まらなくなります。
そんな状態で通常分娩をすればどうなるでしょう。
いきんだ時に頭の血管がプッツンと切れて出血。
血が止まらず・・・。
出血多量で・・・。
ホントに恐ろしいです。
妊娠高血圧症候群やHELLP症候群では、出産中に子癇(高血圧状態での痙攣・失神・記憶喪失)などが現れたり脳内出血が起こったりします。
文献を見ると、合併症の中でも「脳内出血」が一番危険なようです。
しかも危険なのは出産時だけではありません。
産褥時(出産後の数週間)の間にもこれらの症状が発症することもあるようです。
「食あたりかな?」
「なんで血圧が高いんだろう?」
「胃の痛み止め出しましょう!」
「とりあえず血圧のお薬だします!」
こんな悠長ことをしている間にどんどん症状は悪化します。
刻一刻と出産の危険度が増していきます。
少しでも早く帝王切開でおなかの赤ちゃんを出してあげる事が重要です。
ヘルプ症候群が症状悪化!進行を止める治療は?
ヘルプ症候群の唯一の治療方法。
それは「母体から胎児を取り出す」事です。
一刻も早くです。
とにかく出産するしかありません。
帝王切開での出産になります。
通常分娩は諦めましょう。
血圧は上昇し、薬もあまり効かず。
血小板はみるみるうちに減少。
大量出血を覚悟で緊急の帝王切開となります。
大切なのは少しでも早く医者が「ヘルプ症候群」と診断する事です。
そして医療設備の整った病院での緊急出産です。
大量に輸血が必要です。
出産後もしばらく不安定な症状が続きます。
血圧については産後数か月は高血圧が治りません。
情緒不安定となり、体調はかなり悪かったです。
ヘルプ症候群が発症してから出産するまでの時間が長ければ長いほど、母体への影響は大きくなります。
少しでも早くヘルプ症候群を疑う事が大切です。
産後の経過については次の記事でかいています。
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